さて、それではインプラントとブリッジや義歯とを比較するとどうでしょうか。

まず、ブリッジの問題点1のように他の歯を削る必要がありません。
次に問題点2のように今残っている歯に負担がますことはなく、逆に今残っている歯の負担が軽くなり、保存しやすくなります。

というのは、インプラントでは、よく噛めるようになるからです。歯は、歯列と言って、本来のアーチ状に並んでいる状態が、個々の歯がお互いに助け合って強い力で噛むことができるものです。

ですからインプラントは他の歯を守ると言えます。

では、義歯と比べると本来の歯と似ているので義歯の短所は全部クリアしてしまいます。

◆インプラントの短所

1.身体的適応条件がある

2.埋め込むための外科的手術が必要なこと

3.比較的高額である

しかしインプラントの短所の1つめは身体的適応条件があることです。

インプラントは顎の骨の中に埋め込むものですから埋め込むだけの顎骨が存在しないといけません。骨の中と深さがあることと、骨質も問題で、骨質が軟らかすぎても硬すぎてもうまくいかないことがあります。軟らかすぎると、なかなか歯根部と骨がくっつきにくいし、硬すぎると埋め込む時に穴があけにくく骨にダメージが出てくっつかないこともあります。

ここで 「くっつく」 というのは、フィクスチャーと顎の骨が密着することを意味します。フィクスチャーはチタン製で体にとっては異物ですが、有害ではないので、骨が増殖して、包み込んでゆきます。これを骨結合、オッセオインテグレーションと言います。

骨量が不足している場合。今までインプラントができなかったケースも、今では骨をつくる技術が大きく進歩したので、できないケースがますます少なくなりつつあります。

インプラントのいわば2つめの短所は、埋め込むための外科的手術が必要なことです。手術というと大変なことのようですが、親不知でも、まっすぐ生えていてかなり小さな親不知を抜歯する程度の手術侵襲より軽度かなというところです。

親不知は小さな場合でも、直径1センチぐらいはありますが、フィクスチャーの太いものでその半分の5ミリくらいです。深さも親不知より浅く、親不知を抜くと歯ぐきが盛り上がってくるまで穴が開いている状態ですが、インプラントでは、フィクスチャーを埋め込んでふさいでしまうわけで、抜歯と比べるとやはり傷はすぐ治りますし、術後の痛みも基本的にないと言っても過言ではありません。骨を作るという特別なことをしなくて一本だけ埋入する場合なら、30分もかかりません。ですからインプラントの短所というよりむしろ長所は、手術が簡単で楽であるということができます。

インプラントが可能な人とは、埋入手術に耐えられる成人です。

全身疾患、心疾患系の慢性疾患(心筋梗塞、狭心症など)、糖尿病、高血圧などでも、急性期でなくて、症状が安定してコントロールできている人では可能です。

どれだけコントロールできているか、内科等の主治医に連絡をとって、必要な情報を求めて判断する場合もあります。それと、インプラントを埋入するには、顎骨が成人する頃まで成長発育しますから、成人されてからの方がよいでしょう。年令の上限はありません。80数才でもインプラントができた症例が報告されています。

インプラントが噛むという機能では、天然の歯より、強く噛めるし、むし歯にならない長所があっても、保険の治療と比べるとやはり高額になってしまい、インプラントの3つめの欠点は、比較的高額であるということです。

インプラントが、その理由の為に出来ない人の方が多いというのも真実ですが、高い技術で作った高価な材料、器具、器材、器械、そしてそれを学ぶための費用、時間の為に高いのですから、はやり安くするのが不可能としかいえません。歯科医が不当に利益を得ているわけではありません。(もちろん、例外的な歯科医が存在していて、ニュースになるということはありますが、そのようなことはどの世界にもあり、ほとんどのまじめな歯科医は、眉をひそめているのですが、それはニュースにはなりません。でも、本当の所は、心ある人にはわかっていただけると思います。)ともかく、費用がかかるものを不当に安くすると、とんでもないしわよせが来て、結局は患者さんに迷惑が来てしまうということです。


当院では、インプラント治療を、積極的にはおすすめしていません。今まで述べたように、インプラントそのものではなく、インプラントを取りまく社会的環境を十分に考慮しないとなかなかできるものではありません。

当院では、限られたケースのみ、インプラントを数多く手がけている専門医に外科的手術(インプラントのフィクスチャー埋入)をしてもらった後、術後のケアから冠(クラウン=かぶせもの)の装着とその維持・メインテナンスは、当院が行います。将来インプラントのケースが増えたら、埋入も含めて全てを当院で行う可能性もあります。

インプラント埋入から、冠装着まで当院では2010年1月現在、一本につき38万円かかります。これが高いかどうかの判断は人それぞれの価値観によって決まるものでしょう。100万円の車が安いという人も結構いらっしゃると思います。インプラントと車の共通点はメインテナンスが大事ですが、インプラントの方が特に大事です。インプラントよって噛めるようになるとすれば大変素晴らしいことです。噛める幸せを十分に味わってもらうことは歯科医にとっても幸せなことです。